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今、老後を一番心配すべき人たちは自営業者やフリーランスの人かもしれません。
厚生年金に加入できないので、会社員と比較すると公的年金の受給額はどうしても少なくなってしまいます。
定年がないため60歳を過ぎてもガンガン働く、という老後対策もできますが、実際にいつまで働けるかは未知数ですよね。
そこで注目したいのが「国民年金基金」です。 今回は、自営業者やフリーランスの方に向けて「iDeCo」と「国民年金基金」2つの制度についてじっくり解説します。
目次
自営業者やフリーランスの皆さんは、国民年金に加入されているわけですが、では「国民年金基金」はご存じでしょうか。
国民年金基金とは、国民年金に上乗せする形で、自営業者やフリーランスといった第1号被保険者の老後の所得を保障する年金制度です。ちなみに、第2号被保険者とは会社員や公務員、第3号被保険者とは第2号被保険者に扶養、つまり生活を支えてもらっている配偶者(一般に夫もしくは妻)。専業主婦(夫)の皆さんのことを言います。
さて、国民年金基金に話を戻しますと、会社員や公務員といった給与所得者の公的年金は、国民年金の上に厚生年金が乗る、いわゆる「二階建て」になっています。国民年金だけの第1号被保険者とは、受け取る年金額に大きな格差が生じるため、その差を解消することを目的に、1991(平成3)年に創設されました。
国民年金基金の加入は任意です。自ら掛け金の金額を決めて、それを毎月積み立てることで老後に備えます。では、老後のために定期預金をするのとどう違うのか。実は、国民年金基金には税金面でのメリットがあるのです。
これって何かに似ていませんか? そう、iDeCo(イデコ)と目的やその仕組みで似ているところが多いのです。では、自営業者やフリーランスの皆さんにとって、実際はどちらが有利なのか? それを多角的に検証してみましょう。
iDeCo(イデコ)と国民年金基金を4つのポイントで比較、判定してみました。
iDeCoも国民年金基金も掛け金は全額所得控除。所得控除とは、所得のうち課税される部分から一定額を差し引くというもの。結果的に課税所得が下がりますから、所得税と住民税が減税されます。
それぞれの制度に加入できる期間も20歳以上〜60歳未満と原則同じ。また、受け取る年金についてもともに雑所得として課税されますが、公的年金等控除が適用されます。
iDeCo(イデコ) | 国民年金基金 | |
---|---|---|
掛け金 | 全額所得控除。減税の対象は所得税と住民税 | |
年金 | 雑所得として課税され、公的年金等控除が適用 | |
一時金 | 退職所得として課税され、 退職所得控除が適用 |
(※)一時金での受け取りは不可 |
掛け金の控除対象期間 = 掛け金支払期間 |
20歳以上~60歳未満(最長40年) | 20歳以上~60歳未満(最長40年)。 ただし、国民年金の任意加入者は60歳以上~65歳未満も対象 |
ただし、iDeCoの場合、一時金として受け取ることができ、その際は退職所得として退職所得控除が適用されます。
また、国民年金基金の場合には、国民年金に任意加入(※)している人に限りますが、さらに60歳以上〜65歳未満の最大5年間加入できます。そうなると、国民年金基金の方がより多く掛け金の税控除の恩恵を受ける可能性があります。
したがって、税控除での比較・判定は「引き分け」とします。
iDeCoも国民年金基金も、ともに掛け金の上限は月額6万8000円です。
ただし、iDeCoは月額5000円から始められ、1000円単位で増額できます。また、「年単位拠出」といって、年間で上限額(毎月の上限額×12カ月)を超えなければ、例えば余裕のあるボーナス月に掛金を増額することも可能です。自営業者やフリーランスは、一般的にはボーナスがありませんが、例えば夫や妻が会社員や公務員であれば、ボーナス月は世帯として資金的余裕が生まれますので、そういうタイミングに増額してもいいでしょう。
対する国民年金基金ですが、とくに50歳未満については加入年齢が高いほど、掛け金が原則高くなるよう設定されています。例えば20歳(と0カ月)男性は1口目が7110円なのに対して、35歳(と0カ月)男性は1万2870円となります。掛け金の増額分(2口〜6口目)も各口数の金額が年齢、性別で事前に決まっています。
iDeCo(イデコ) | 国民年金基金 | |
---|---|---|
上限額 | 月額6万8000 円(※) | |
最小額など | 5000 円から1000 円単位。 ボーナス払い等も可 |
年齢、性別によって1口目、 2口目以降の金額が異なる |
その他 | 減額や支払いの一時中断は可能。 ただし、最小掛け金または1口目の額を減らすことは不可 |
したがって、少額から始められ、柔軟に掛け金を選択できる点で、iDeCoの方が使い勝手がいいと言えるでしょう。
大きな違いは、iDeCoが受取期間の定められている有期年金なのに対して、国民年金基金は基本的に終身年金ということ。「一生涯もらえる」という安心感と、「人生100年時代」と言われる今、長生きリスクに対応するという点では、国民年金基金が有利と言えます。
iDeCo(イデコ) | 国民年金基金 | |
---|---|---|
受給開始 | 原則60歳。 加入期間10年未満の場合は加入期間に応じて61~65歳に引き上がる |
原則65歳。 ただし、60歳からの受給も可能なプランあり |
受給期間 | 有期年金として5年以上20年以下の期間に受給。受給権発生の年齢から70歳になるまでに一括受給も可能 | 終身年金。60歳から年金の一部を有期年金(5年、10年、15年)として受給することも可能 |
ちなみに、iDeCoは原則60歳からの受け取りが可能ですが、国民年金基金も2口目からの加入となるものの、60歳から年金の一部を受け取ることもできます。
トータルで考えると、年金の受取開始と受取期間では国民年金基金の方が有利と考えます。
国民年金基金の金利は定額です。現在の予定利率は1.5%。過去最も低水準になっています。それでもメガバンクの定期預金の金利が0.01%ですから、実に150倍なんです!
しかし一方で、長期間、固定の金利で増やすことはリスクでもあります。もしも将来、予定利率を上回る物価上昇、インフレとなれば、例えば1万円で買えたものが1万1000円に値上がったとすれば、それを上回る利率で資金が増えないと、その資金は実質目減りしたことになるからです。
また、年金の受け取りは基本的に終身ですので、長生きするほど元本を上回っていきます。逆に長生きをしないとメリットは低下します。例えば男性の場合、80歳、15年分を受け取るとちょうど元本と同じになります(プランは15年保証付きを選択した場合)。ざっくり言ってしまうと、80歳以上生きないと預金していたよりも目減りしてしまい「元が取れない」のです。
対するiDeCoですが、投資商品=投資信託での積立を選択した場合、運用成績によっては国民年金基金の予定利率を上回る可能性もありますし、逆にそれを下回り、さらに元本割れのリスクもあります。また、投資信託であれば信託報酬などの投資コストが発生します。
同じiDeCoでも、定期預金や保険といった元本確保型の商品を選択すれば、基本的に損をすることはありません。ただし、定期預金の金利は金融機関によって異なりますが、0.01~0.05%程度といったところ。国民年金基金には及びません。また、iDeCoでは口座開設・管理手数料などのコストが発生します。
つまり、そもそも「老後資金を運用で増やす」と考えているなら、そのデメリットを理解した上でiDeCoを活用するべきです。税制のメリットはもちろん、積立による長期投資は運用リスクを抑える効果も期待できます。
しかし、定期預金や保険で老後資金を用意したいのであれば、より増え方の大きい国民年金基金が有利となります。
結果、資産運用での比較は「引き分け」とします。
iDeCo(イデコ) | 国民年金基金 | |
---|---|---|
運用内容 | 投資商品=投資信託を選択した場合、運用成績により変動。定期預金、保険の場合は利息、または商品ごとに予定利率を設定 | 予定利率1.5%で運用 |
メリット | 運用成績によっては元本を大きく上回ることが期待できる(投資商品) | ・元本確保 ・一般の貯蓄商品よりはるかに高い金利 |
デメリット | ・運用成績によっては元本割れをするリスクもある(投資商品) ・維持管理コストの発生 |
・ある程度、長生きしないと元本以上は増えない ・インフレの上昇によっては資産の目減りリスクも |
iDeCo(イデコ)と国民年金基金、その内容を比較検討した結果は1勝1敗2分けとなりました。では、結局どちらを選べばいいのでしょうか?
老後資金づくりは多少のリスクは取っても運用をしたいと考えるのであればiDeCoとなります。対して、リスクは取りたくないのであれば国民年金基金になります。
問題は、リスクを取るべきかどうか決めかねているというケース。確かにどちらを選択しても一長一短があります。
そこで提案です。ならば、両方やってみてはどうでしょう。そう、目指すのはお互いの「いいとこ取り」。iDeCoと国民年金基金、お互いのデメリットを消し合い、それぞれの良さをさらに引き立てる、そんなベストパートナーであるからです。
iDeCoと国民年金基金、両方の掛け金の合計が月額6万8000円を超えない範囲であれば、併用が可能なのですが、そんなことができるのは自営業者、フリーランスの皆さんだけ。会社員や公務員にはない特権と言えるのです。
では、どのような併用がいいのでしょうか。そのベースとなるのが自分に合った資金配分(ポートフォリオ)を考えるということです。
詳しく説明してみましょう。iDeCoの強みは投資商品で資産を増やすことが可能であること。しかし、資産を増やすと言っても、その手法はさまざま。そこで知ってほしいのが、その傾向です。
一般に資産が大きく増えることが期待できる投資商品は、大きく減らす可能性も高くなります。「ハイリスク・ハイリターン」という言い方をされますが、商品としては株式、投資先としては新興国や新産業、先端産業などがそれに該当すると考えていいでしょう。
一方、同じ投資商品でも、比較的リスクの低いものは資産の増え方も大きくはありません。いわゆる「ローリスク・ローリターン」と呼ばれるもので、商品であれば債券、投資先なら先進国や基幹産業などがそれに当たるでしょう。
このような傾向を理解した上で、iDeCoと国民年金基金の掛け金の割合を考えるとよいのです。
もし確実なリターンを望む場合は、iDeCoに充てる資金は少なめにして、国民年金基金の掛け金の割合を増やす。そうすることで、国民年金基金がiDeCoの運用リスクを抑える役目を担うわけです。
対して、高いリターンを目指したいという人は、国民年金基金よりもiDeCoに充てる資金を増やす。iDeCoで積極的な運用を行うことで資産を増やしていくという考え方です。
それらを踏まえて、iDeCoと国民年金基金の具体的な併用例を3プラン、円グラフのポートフォリオ(資金配分)で示してみました。
各プランの設定条件として、男性30歳(と0カ月)、毎月の掛け金の合計は約3万円とします。iDeCoでの目標運用利率を2%(リスク低め)、3%(中程度)、4%(高め)の3パターンに分け、国民年金基金は一律1.5%、15年間保証の終身年金プランとします。
結果、90歳まで生きるとして、実際に老後資金はどの程度用意できるのか。各プランを見てみましょう。
いずれのプランも毎月約3万円積み立てて、想定どおりの運用利率なら1500万~1800万円(元金 約1080万円)ほど老後資金が用意できます。
加えて、掛け金がともに全額所得控除になり、iDeCoの運用で得られた利益は全額非課税、年金も受給時に大きな控除を受けることができますから、実際はもっと大きな金額が用意できていることなります。
「資金は増やしたいが、運用リスクも抑えたい」といった、ある種、欲張りの人にはこの手のポートフォリオを参考に、上手に併用をしてみてはどうでしょうか。
iDeCo(イデコ)の魅力が理解できたら、次はいよいよ手続きを済ませちゃいましょう!
iDeCoを始めるまでのおおまかな流れは以下のとおりです。基本的に書類のやりとりで手続きを進めていきます。
まずは金融機関でiDeCo口座を開設する必要があります。金融機関は自由に選べますが、国民年金基金連合会が口座振替契約を行っていない金融機関(外国籍の銀行等)は指定できません。
金融機関が決定したら、ネット等で申込書類などを取り寄せます。自営業者やフリーランスの皆さんが提出する書類は主に以下の2種類です。
(1)個人型年金加入申出書
金融機関から送られてきます。申出者情報の記入、捺印した上で金融機関に提出します。書類作成では、捺印(金融機関届け出印)は認印でもOKですが、シャチハタネームは不可です。
(2)本人確認書類
金融機関によって異なりますが、運転免許証や健康保険証のコピー、住民票の写し、印鑑証明書などを提出します。
iDeCoは金融機関への申し込みをしてから手続きが終了し、運用を始めるまで、だいたい1〜2カ月はかかります。
自営業者やフリーランスの人は、年金を取り巻く状況的には不利ですが、iDeCoと国民年金基金の両方を使えることができると知って安心したのではないでしょうか。
大事なことは、自分の興味や性格に合わせて増やし方のスタンスを決めることです。投資に関心があれば運用利率を高めに設定し、リスクが怖いと感じれば低く設定する、といったように自分なりのプランを考えてみてください。
iDeCo(イデコ)は一人一口座しか持てないため口座選びが重要。でも、多くの金融機関の中からどこを選べばよいか迷いますよね。そこで、分かりやすい基準として、iDeCo専門サイトNo.1の「iDeCoナビ」でよく見られている金融機関と、独自サービスがある注目の金融機関をご紹介します。
SBI証券
楽天証券
松井証券
りそな銀行
三井住友銀行
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自営業が始めるべきはiDeCo(イデコ)?国民年金基金と徹底比較
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