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こんにちは、金融ジャーナリストの鈴木雅光です。
運用会社の運用担当者や経営者に会って、注目されているファンドの裏側にズバッと突っ込んで質問しまくる企画!
第2回目のお相手は「積立王子」のニックネームでおなじみ、セゾン投信の代表取締役社長、中野晴啓さん。独立系運用会社の雄で、個人投資家の間でも厚い信頼を得ている“積立投資の伝道師”ともいえる人です。
さて今回、そんな中野さんからどんなお話が飛び出してくるんでしょうか……。
目次
こんにちは。本日は中野さんに根掘り葉掘り聞いていきたいと思っています。
こちらこそ、よろしくお願いいたします!
ところで、セゾン投信が「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」と「セゾン資産形成の達人ファンド」という2本の投資信託を設定したのが2007年3月ですから、13年が経過したことになります。
2020年2月13日時点で運用資産総額3000億円を突破して、2020年2月末時点で総口座数14万5000口座に達したわけですが、中野さんとしてはこれだけの規模になることを予想していましたか?
純資産総額 | 信託報酬 (年率・税込) |
特徴 | |
---|---|---|---|
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド | 1823.7億円 | 0.57% ±0.02% 程度 |
低コストのバンガードのインデックスファンドを通じて、世界の株式と債券に分散投資する |
セゾン資産形成の達人ファンド | 774.3億円 | 1.35% ±0.2% 程度 |
長期的な視点で個別銘柄の調査を行うファンドへの投資を通じて、世界の株式に分散投資する |
「想定内でしたよ」って強気に言えればよいのですが、本音を言えばここまでになるとは思っていませんでした(笑)。
全くのゼロからのスタートでしたから、3000億円もの運用資産総額を積み上げるのって、宇宙の果てのように遠く感じるわけですよ。まずは100億円、それをクリアしたら300億円、そしてようやく1000億円が見えてくるという感じで1つひとつを乗り越えてきました。
道のりがあまりにも遠すぎて、途中で投げ出したくなりませんでしたか?
実はセゾン投信を立ち上げたとき、さわかみ投信の創業者である澤上篤人さんから、「お前は俺の新しい仲間だ。一緒に長期投資を根付かせるために頑張ろう。でもな、俺たちがやっていくことの果実を得られるのは次の世代だ。俺もお前も捨て石に過ぎないが、それで十分じゃないか。カッコいい捨て石になろう」って言われて、その気にさせられたわけですよ(笑)。ですから、途中で投げ出したくなる気持ちはありませんでした。
とはいえ、自分が社長に就任している間に運用資産総額3000億円という数字が見られるとは、正直言って全く思っていませんでした。
コロナショックの影響で世界的に株価が大きく下がっています。セゾン投信の運用にも大きな影響が出たんじゃないですか?
確かセゾン投信の運用がスタートした直後にリーマン・ショックが起こったと思うのですが、あのときと比べて何か違いはありますか?
あります。投資信託は純資産総額に対して一定の率の信託報酬を投資家の方からいただいています。なので、投資信託が値下がりして純資産総額が減少すると、そこから得られる信託報酬が減ります。つまり私たちの業績が悪化するわけですね。
リーマン・ショックのときも今回のコロナショックでも、市場の暴落で純資産総額が大幅に目減りしたことに変わりはありませんが、リーマン・ショックとの違いは、今の方が純資産総額の規模が比べものにならないほど大きくなっていることです。リーマン・ショックの時期は300億円程度でしたが、今回は3000億円を超えていましたから、そこから得られる収益の金額が大幅に減ってしまうわけです。
大変! それじゃあ、赤字になっちゃうんじゃないですか!?
だから、そこが経営のリスクマネジメントの肝になるわけです。想定を超える市場の変化に直面すると、運用会社の場合、経営の根幹が揺るぎかねません。しかし、そこで経営難に陥っていたら、投資信託を購入してくださっている投資家に迷惑がかかってしまう。だから、運用会社は常に一定の内部留保を持たねばなりませんし、特に私たちは事業継続が担保できる自己資本に留意しながら経営を行っています。
今回のコロナショックで、慌てて投資信託を解約した人はいましたか?
月次で見れば毎月資金は流入超になっていますが、やはり解約は出ましたね。
解約した人に対して何か一言、ありますか?
14万5000口座の多くの方は冷静で、大きな動きはありませんでした。
ただ一部の人が荒い動きをしたのも事実です。特に5~6年と比較的長く積立をしてきたのに、今回の下げで自身の損益分岐点に近づいてくると、どうにも冷静さを欠いてしまい、解約を選択した人も少なからずいました。
人間、誰しも損をしたくないと思うのは仕方ありませんが、皆さんの資産形成のゴールをこの機会にもう一度、しっかり見つめてほしいと思います。ゴールはもっと遠い未来のはずだし、長く運用すれば何回かはこのような急落に直面します。それでもブレずに積立を続けられるかどうかで、未来が決まってくるのだと思います。
今、セゾン投信が運用している投資信託は2本だけですよね。もっと増やさないんですか?
増やす理由がないと考えていますよ。
でも、どんどん新しい投資信託を作ってお金を集めたほうが、会社の規模だって大きくなるじゃないんですか?
もしそれをやったら、セゾン投信は「セゾン投信」ではなくなります。当社はバイサイド(株式や債券などを購入して運用する側)の運用会社であって、セルサイド(金融商品を販売する側)の系列ではありません。
セルサイドのための運用会社には、親会社である銀行、証券会社に手数料を落とすために存在すると言っても過言ではないようなところもあり、次々に新商品を立ち上げて資金集めをしようとする傾向にあります。こうしたセルサイドのビジネスモデルは生活者を幸せにしない、と私は考えています。
でも、いろいろなタイプの投資信託を選べたほうが、投資家は収益の機会に恵まれると思います。それでも投資信託の本数は増やさないのですか?
商品の選択肢が増えれば収益の機会が増えるというのは幻想ですよ。
だって、選択肢が多くなると、多くの人は「あっちの投資信託は値上がりしたのに自分の投資信託は下がっている」などと値動きに一喜一憂させられて、乗り換えようとするじゃないですか。そのたびに高い手数料を払わされるし、乗り換えた投資信託が必ず良い成績をあげるという保証もないわけですよ。
その挙句、乗り換えた投資信託でも損をさせられて、資産運用が嫌になってしまう。これでは長期の資産形成ができませんし、結果的に生活者は幸せになれないと思うのです。
日本株や米国株、債券、REITなどさまざまな資産クラスがあるなかで、セゾン投信はなぜ「国際分散型」の投資信託だけに絞っているのですか?
長期の資産形成には世界経済全体の成長に乗っかり続けていることが大事であり、それには国際分散型のポートフォリオが最適だと思っているからです。それ以外のものを私たちは提供すべきではないと考えています。それ以外の投資信託が欲しかったら、別の運用会社に行っていただいても結構です。
運用会社にとって一番大事なのは、フィロソフィー(哲学)です。それはどういう強みや個性で、投資家の幸せを実現できるかということであり、それをビジネスモデルとして具現化できているかどうかが問われます。セゾン投信の場合は「投資家の豊かな人生という幸せを実現する」という哲学で、決して曲げることはありません。
でも、哲学だけで収益を伸ばすことはできますか?
私たちの事業目的は、運用資産残高を増やすことがメインではありません。もちろん一人でも多くの参加者は欲しい、一人でも多くの人に資産形成の大事さに気付いていただき「セゾン号」に乗ってもらいたい、という思いはあります。
それよりも、その気付きを得た参加者が一律に自身の経済的自立を獲得してもらえたらと思います。その気付きへと一人でも多くの方を導くのが、セゾン投信の事業目的です。それをとことん続けていけば、運用資産残高は3000億円を超えて5000億円、いずれは1兆円に達すると信じています。
バンガード社との協業を打ち出したのは日本ではセゾン投信が最初だと思うのですが、最近はセゾン投信に触発されたのか、他の運用会社もバンガード社と一緒に投資信託を設定しています。セゾン投信と他の運用会社とでは何か違いがあるのでしょうか。
確かに、バンガード社と協業した投資信託はいくつかありますけど、当社とは全くの別物ですよ。
けっこう誤解している人が多いのですが、「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」はインデックスファンドではありません。当社以外の運用会社が提供しているバンガード社との協業ファンドは「インデックス型」ですが、当社は「アクティブ型」です。
もちろんパーツとしてバンガードのインデックスファンドを使ってはいますが、それを用いて私たちが考えるグローバルポートフォリオを体現したのが、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドです。ここは誤解のないように、強調しておきたい点です。
他の運用会社の類似商品などと比べて、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドは信託報酬が高いように見えます。このことをどのように捉えていますか?
確かに「コストが高い」などと批判されたこともありますが、ファンドの規模が大きくなって経営に余裕が出てきたら、徐々に投資家の皆さんに還元することは創業期から申し上げてきました。
実際、2020年3月にセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの信託報酬を再度引き下げたのですが、なにぶんまだ小さい会社ですから、自分たちでできる範囲で今後も引き下げていくつもりです。
ただ、今のコスト競争に巻き込まれるつもりは毛頭ありません。それよりも必要だと思っているのは、コスト以外のところで、どうすれば投資家に新しい「付加価値」を提供できるかということです。
その「付加価値」とは、どういうイメージですか?
例えば、ファイナンシャルアドバイスの提供です。セゾン投信では「定期売却サービス」を始めるのですが、その仕組みを作っても、実際に利用する投資家がこれをどう活用すればよいのか、なかなか理解できないかもしれません。それに、人それぞれ資産の使い道が違うので、個人個人に合うような方法を的確にアドバイスできる人が必要になります。そのため、当社からお客さまに個別の具体的なライフプランを前提にアドバイスをしたり、あるいは真っ当なIFAの皆さんを通して、当社なりの考え方をお伝えできればと考えているところです。
IFAに多額のインセンティブを約束して、「セゾン投信の投資信託を売ってもらっているんじゃないの?」といった批判も出てきそうですが……。
私たちはIFAの皆さんに対して、セゾン投信の投資信託を売ることが目的化するようなサービスは提供しません。まだ社内にプロジェクトチームを立ち上げたばかりなので、具体的なサービス内容は言えないのですが、投資家の最終成果を適切に導くために「付加価値」を届けられる仕組みを作りたいと思います。
中野さんたちの活躍もあって、個人の資産形成に対する意識は、それこそ10年前に比べて大きく変わったと思うのですが、これから先、さらに変わっていくのでしょうか? また、セゾン投信として、いまどのような課題・目標を持っていますか?
10年前、私たちのような独立系の運用会社は、大手運用会社に対して明確な対立軸を描くことができました。ノーロード(購入手数料無料)、積立投資、あるいは相対的に低い信託報酬といった点がそうですね。
ただ、最近は金融庁の方針もあって「顧客本位の業務運営」が業界内に浸透しました。金融機関系の運用会社の中にも、直販を始めたり、低コストのインデックスファンドを積極的に扱ったりしているところが増えています。その意味では、私たち独立系の運用会社の個性が薄らいでいるのは事実です。
とはいえ、セゾン投信の成長は続いています。私たちの哲学に同意してくださる人はまだまだ増えていますから、私たちの哲学をさらに広く打ち出していきたいと思います。
ちなみに中野さんはまだ社長を続けるのですか?
もちろんどこかの段階で後継者に譲るときは来るでしょう。でも、今ではない。まだ赤い、ちゃんちゃんこを着る年齢ではありませんからね(笑)。
とはいえ、いずれ一線を引くときはやってきますから、次世代につなげるために、哲学をしっかり組織に浸透させていこうと考えています。一足先に澤上篤人さんは会長になられましたが、他の独立系の運用会社はどこも後継者をどうするかが共通の課題だと思いますよ。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました!
撮影/村越 将浩
セゾン投信のファンドはどこの金融機関でも購入できるのではなく、購入できる金融機関が限られます。その中でも条件がよい金融機関をご紹介します。
是非、証券会社選びの参考にしてみてください。
SBI証券
楽天証券
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